PFC-FD療法とは
再生医療の一つにPRP(多血小板血漿)療法という方法があります。
血小板の中には成長因子が多く含まれており、細胞の成長を促す物質や免疫に関わる物質が含まれています。1990年代から皮膚科・整形外科領域を中心に始められてきたこの治療法ですが、近年生殖医療領域でも注目が集まっており、子宮内注入・卵巣内注入に関する臨床報告が増えてきております。
しかしながらこのPRP療法は「再生医療法等安全性確保法」に基づき厚労省へ認定申請手続きを行い厚労大臣からの認定を受けなければならず、認可申請手続きを行い、認可後は毎年報告を行う必要があり、その利用には制約もあります。この手続きに関して費用の面や時間の面で不便な点が多くありました。
今回導入した、血小板由来因子濃縮物による治療法(PFC-FD療法:Platelet-derived Factor Concentrate Freeze Dry)は、患者さんご自身から採血した血液をセルソース株式会社へ輸送して血小板由来因子のみを抽出・濃縮して凍結乾燥した後にクリニックへ返送して使用できるシステムです。同社の技術により細胞成分を除去するため、前述の複雑な手続きが不要となりました。
- PRP と PFC-FD の比較
PRP | PFC-FD | |
---|---|---|
再生医療等安全性確保法 | あり | なし |
保存 | 当日使用 | 室温 6ヵ月 保存可 |
利便性 | 低い | 高い |
活性化 | 注入後体内にて | 活性化済み |
細胞成分 | あり | なし |
成長因子・ サイトカイン |
あり | あり |
学会・論文報告 | 多数 | これから |
PFC-FD療法の特徴
- 低刺激、低リスクで体にやさしい
患者様ご自身の血液を用いることにより、アレルギー反応や副作用といったリスクが少なく、添加剤や化学製品なども含まれておりませんので、体にやさしい治療と言えます。 - 痛みが少なく、通院負担も最低限
メスを使わず、痛みも少ない治療です。採血後、子宮内または卵巣内に注入するのみで、生殖補助医療に過度な負担をかけることはありません。 - 長期間保存が可能
セルソース社独自のフリーズドライ加工技術により、半年間の保管ができます。周期などタイミングが重要な生殖補助医療にも併用しやすくなっています。
PFC-FD作成方法
治療法
- 子宮内注入
- 目的
- 子宮内膜環境の改善・着床率の向上
- 対象
- 従来の様々な薬剤を使用しても、子宮内膜が厚くならなかった方
- 内膜の厚さは問題ないが良好胚を複数回移植しても着床が成立しない方
- 方法
- 事前に作成したPFC-FDを、胚移植前に子宮内へ通常2回注入します。
- 卵巣内注入
- 目的
- 早発卵巣不全、卵巣反応不良などの卵巣機能不全における、卵胞形成や卵巣ホルモン環境の改善
- 対象
- 原因不明や他疾患治療後のため、卵子採取が困難な卵巣機能不全の方
- 年齢や卵巣手術により、卵巣予備能が高度低下している方
- これまでの体外受精で良好な受精卵が得られなかった方
- 方法
- 事前に作成したPFC-FDを、卵巣内に注入します。注入する時期は症例によって異なります(排卵期、黄体期、採卵時など)。